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「不可解、と思いましたか?」
心を見透かしたように若い男は言う
本当にこの人は何なのだろう?
そんな疑問さえ、謎が多すぎて忘れてしまう
「不思議、とは思ったよ」
と、私は心を見透かされてはならないと言う
それでも彼(若い男よりは良いだろう)は、笑い
「そうですか
どう感じようが、貴女の自由ですから詮索はしませんよ」
と、どこか自慢気に言う
私はもう関わりたくないと思い始めていた
生まれてから最低限の生活を送り、つまらないか普通の間の毎日を過ごしていた
孤独
私はこれを孤独と呼ぶかどうか、それはどうでも良かった
でももし、これを孤独と呼ぶのなら私の孤独はきっと甘い
「不躾で申し訳ありませんが」
私達の間に流れた沈黙はあの日より、1分少々長いくらいだった
「私と旅をしてみませんか?」
「え…」
今、この時代
旅という言葉すら架空のように薄いのに、彼は私に旅を提案してきた
二度しか会っていない、私にだ
「如何でしょう?」
「何処を旅するの?」
私は間髪いれずに言う
彼はそれが愚問だったように一瞬、驚いた
けれど彼は変わらず、笑みを浮かべて
「此処を、ですよ」
と、答えた
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