第零章

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人知れずひっそりと森の中にある村。 村民は狩りをし、田畑を耕し日々安寧たる生活をしていた。 普段ならば騒ぎなど無く、平凡かつ平和な村なのだが、この日だけは違った。 静かな村に響くのは悲鳴。 物が焼け落ち、平和が崩れ去る音がその村を包んでいた。 村に居るのは戦いが苦手な女子供と老人のみ。 男手は殆ど【とある】用事で遠方へと赴いていたのである。 村民は逃げ惑う。 背後から迫るリアルな【死】から。 建物が破壊される音と悲鳴の他に聞こえるのは無邪気な声。 少女のような声が聞こえた。 火が木々にまで燃え移り、重なるように倒れる。 逃げ惑う村民からは見えなくなってしまったが、確かにその向こうにいたのだ。 この村を破壊した悪魔のような存在が。 最初にその存在に出会った女性は逃げながらも思い出す。 一目には普通の人間の少女だった。 可愛いポニーテールに人懐っこそうな笑顔。 少し汚れたローブを着ていたから旅人だったのかもしれない。 しかしその少女に話し掛けようとした時、先に少女が口を開き言葉を発したのだった。 たった一言発した少女はそのまま破壊活動を開始した。 まさか、そんな思考に包まれた村民は混乱し逃げることしかできなかった。 その少女はたった一言こう呟いたのだった。 「兄様がどこに居るか知りませんか?」 このエルフの村で起きた、小さくも大きな事件。 エルフ達は一目散に転移する。 新たに生まれると聞いた魔王に助けを求めるために。 村の男達が向かった魔王城へと。
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