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†††
全く知らない森の中。
近くに木造の小屋が見える。
見ている感覚は有るのに、体は動かない。
そんな俺の目の前には黒髪でボロボロな服を着ている男と、銀髪で朱い目をした……ヘルヴェールが立っていた。
しかしその姿は傷だらけで、今にも倒れそうな姿だった。
そんなヘルヴェールの正面に立つ男は、傷だらけのヘルヴェールに手を差し延べ、
「…わかった。僕が次の魔王になるよ、ヘルヴェール。」
†††
目の前には、俺を覗き込むグレモリィの顔があった。
「おはよう、ライル。」
「……おはよう」
最早何とも言えない。
そんな俺に対してグレモリィは、俺が挨拶を返した事が嬉しかったのか満面の笑みを浮かべた。
「疲れは残っていないか?」
そのまま尋ねられた俺は、咄嗟に大丈夫だと答えてしまった。
それに対して一層笑顔になり、頷いたグレモリィは何かを思い出した様に俺の肩に手を付けた。
「危ない。危うく忘れるところだった。」
そう独り言のように呟いたグレモリィはもう一度俺の顔を見つめて、今度は俺に話しかけてきた。
「目が覚めたら玉座の間に来てくれ、と言伝を預かっていたのだ。」
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