434人が本棚に入れています
本棚に追加
そう…コイツはハナからこのテレビ争奪戦に参加する気はなかったのだ。
いつか誰かがテレビから手が離れるだろうと考え、外でそれを待っていたのだ。
そして予定どうりにテレビはやってきた。
総悟はそれを自分の物にするために受け止めたのだった。
「ありがとうございます土方さん。
んじゃお先に~」
重いテレビを両手で持ち、逃げるようにレジへ向かって行った。
「まッ!…待て総悟ぉおッ!」
言った頃には既に代金を店員に渡していた。
そしてテレビコーナーを振り返ると…
皆それぞれテレビを両手に持って白い歯を見せ合っていた。
山崎もそこそこ新しいテレビを手に入れてはしゃいでいた。
その中で手ぶらのままなのは……唯一俺だけ…。
…嘘だろ……
俺は呆然となり、肩を落として電器店を後にした。
タバコに火をつけ、煙を吐き空を見上げる。
空はオレンジに染まって、ターミナルへ向かう船が真上を通っていた。
翌日
真選組の屯所の屋根にはCSアンテナがつけられていた。
皆は朝から鮮明に映し出された画面に夢中になっていた。
俺はというと…
「画面小せぇなぁ…」
縁側で一人、携帯のワンセグを見ていた。
「…ふぅ…やっぱ地デジはまだ早ぇよな」
タバコの灰が灰皿に落ちた。
ーend
―――
「なぁトシぃ、お妙さんからテレビ買ってあげるからお妙さん家にある道場の借金全部払ってって言われたんだけどさぁ…
金貸してくれないか?」
「…ィヤ」
最初のコメントを投稿しよう!