241人が本棚に入れています
本棚に追加
真那白は本当に綺麗に食べる。仕種もマナーも完璧だ。しかも完璧な美形。さぞかしモテるであろうに、なんで好き好んでゲイの道に走ったのか。
…よく美形はナルシストで、自分に近い存在…則ち同性に走るとクラスメイトの自称腐女子鈴木さんが言っていたが。
真那白は、以外なことに自分の容姿に無頓着だ。いやむしろ嫌っていると言っていい。モデルのくせにプライベートの写真やビデオは絶対に撮らないのだ。モデルは仕事と割り切ってやっていたようだけれど、本当は嫌だったのかもしれない。
「闇紫。手が止まっているよ?美味しくないのかい?」
しばらく見とれてたらしい。慌ててごまかした。
「い、いいや美味しいよ。このチョコムース、あんま甘くなくて」
本当だ。コースの料理はどれも食材の味を活かした素晴らしいものだった。流石真那白が進めるだけある。
「気に入ってくれて嬉しいよ。…ここはね、梓さんが俺に教えてくれたんだ。いつか三人で来たいと思ってた」
え…母さんが?
「梓さん、生きていたら今日が出産予定日だった。生まれてきた子供は…男の子かな?女の子だったのかな?俺が父親になるはずだった…」
真那白…、それ以上言わないで。
僕はギュッと手を握り締めた。
「君の兄弟になるはずだったのに。俺は彼女も子供も守れなかった。不甲斐ない人間だ…」
咎人が懺悔をしていれかのような告白。
「俺はきっと地獄へ堕ちるよ。」
食後の紅茶を啜りながら、真那白が呟いた。
暗く、冷たい瞳をしていた。
***********
まだ餓鬼だった俺が罪に問われることはなく、俺がいた環境と育児放棄及び虐待が考慮され、俺はある隔離された児童更正施設に入れられた。
そこでの環境も、前と変わらなかった。度重なる体罰、強制労働。少年院となんら変わらない。見上げるほど高い塀がぐるりと施設を囲み、しかも逃げ出せないよう電流まで流していた。
寒い灰色の檻の中で、俺は凍えていた。
外にいた時と違うのは、一日三回まずい飯が食えることだけ。それでも、俺は飢えることがなくなった。薄い汚い毛布に包まりながら、声にならない悲鳴と涙を流し続けた。
最初のコメントを投稿しよう!