罪と罰

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懺悔せよ、エデンを追放されし七番目のカイン 「…は?何だよそれ…」 紅月がくわえていたタバコをぽろり、と落とした。顔は驚愕に染まっている。俺はくす、と口許を歪めた。 「言った通りだよ、紅月。俺は義理の息子と関係を持ってる」 「おい、正気かよ?!」 紅月は俺の胸倉を掴み上げた。 「てめぇ、あの女性と約束したんだろ?!護るって!!それを…、よりによってセフレ扱いか!?」 セフレ?…もっと悪いよ。何たって、 「合意すらないからね」 俺はそう言ってニッコリ笑った。 *********** カインはアダムの七番目の息子でした。カインは他の兄弟より美しく、その美貌をして驕り高ぶっていました。ある日カインは自分より美しい少年と出会いました。少年の名はハイン。リリスの息子。淫魔リリスの美貌と知性を受け継ぐ、魔性の権化…。 カインはハインに禁断の恋をしました。 そして禁断の行為をしてしまったのです。 カインは神の怒りに触れ、天の火に灼かれて死にました。 そしてゲヘナへ着いた時、地獄の審判に真実の愛を訴えましたが、禁忌を犯した罪により、 ……業火に永久に焼かれる罰をかせられました。 村上蒼月著「カルナヘナ」 夕日が目に痛い。朱い光が、汚れたこの身を照らす。 「君の御祖父様の書だ、紅月」 紅月の、顔色が変わる。 「俺の師。そして…俺のもとの常連客様だ」 くすくすくす…。 腹の底から笑いが起こる。すべてが馬鹿馬鹿しくて堪らない。 「君だって、人にどうこう言えるのかい?神父様に捧げる愛が、友愛や尊敬と呼べるものではないないはずだ」 紅月の顔がみるみる高揚していく。 バキ!! 重い拳が、ストレートに左の頬に決まった。 「お前まで、あのクソジジイの話蒸し返すのか?!あいつは…人間じゃねぇ、ただの腐れ外道だ!!神父さんだけは…、俺を見てくれたんだ、絶対に傷付けたりしない!!てめぇと違ってな!!」 強い瞳だ…。熱く、ジンジン痛む頬を摩りながらぼんやり思う。傷付いても傷付いても羽ばたこうとする、猛禽のようだと。 けれど。 綺麗事過ぎて見ていられない。 見返りを求めない愛はただの信仰だ。 「目を醒ませよ紅月。」
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