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赦して…
どうか赦して…
あれから俺は懺悔を繰り返す。どんなに傷をえぐって血を流しても、地を這いずり廻っても…癒しの手は現れない。
梓さん…俺は、どうして生まれて来たんだろうね?
梓さんの墓標は、外人墓地の外れの丘の上にある。ここからは、秋の色に染まる街が見渡せる…。
「風が冷たいね、梓さん…。もう冬が来るのかな。早いね…季節が終わるのも」
ここに来る前に買った深紅の薔薇の花束を、そっと墓前に捧げる。
風が、ビュウと泣いた。
「俺が死んでも、貴女の傍にいけない…永劫の別れだね。神様っていうのは、どこまで残酷なんだろ。」
貴女に会ったのは春だった。けれど時間は俺を置き去りに残酷な程早く過ぎて行く。
まるで俺には、永久にそこで足掻いていろと言わんばかりに…
「梓さん…貴女の息子は、一番信頼して預けたはずの人間に、汚されてしまったよ…」
涙が、頬を伝った。
足に力が入らなくて、その場にうずくまる。
「あ、はは…何故…なんだろうね…。愛して…しまったんだ。貴女を、裏切るつもりはなかった!!赦さなくていい…どんな罰でも受ける…!」
だから。…もう少しだけ、一緒に居させて欲しい。
「何度も…繰り返して、迷って…、それでも、また繰り返すんだ…!」
逃れられない。愛しくて口づけ、その肌に触れたいと願い…!
ああ!なんてあさましい!
「誰に罵れてもいい!詰られても疎まれても…でも!」
貴女の哀しみと怒りだけが恐ろしい…。
どうして、この手は汚れている…?
「梓さん…」
翼をもがれた天使は、地に堕ちるしかない
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「あいつ…まだ引きずってんのかよ」
真那白…昔からの腐れ縁。どぶねずみのように這いずって生きていた頃から、奴はいつもどこか危うさを纏っていた。
触れれば剃刀のようにすぱっと斬られそうな…
奴の目はまるで地獄を垣間見たように暗く淀んでいた。獣のような瞳。
冷たく、暗い闇の深淵…。
「紅月…。どうしたのです?何か考え込んでいるようですが…」
ジェラルド神父様。
「いいえ、なんでもないすよ」
あいつは…、まるで死に場所を探してるようだった。
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