241人が本棚に入れています
本棚に追加
冷たい…
散り行く木の葉を見ている。
ひらひら、舞い堕ちる、紅…
いつまで、そうしていたのか。
長い黒髪を散らせ、男は墓前の前に横たわっていた。
十字架の前に、力無く崩れ落ちた美しい男。
深紅の花びらが舞う。
真那白…
「何、してるの?」
僕は呆れたようにつぶやく。
真那白は起きずに口を開いた。
「梓さんの墓参り」
いや、そうじゃなく。
「なんで寝てんの」
「…さあ、なんでだろ」
くすくす…
真那白は笑った。苦笑とも諦めともつかぬ笑み…。
もう夜のとばりが下りる。男の体はきっと冷え切っているだろう。
何故、この冷気に身を委ねているのか。
「そこどいてよ。花を置けない」
僕が持って来たのは白百合の花束。
「…ねぇ闇紫。俺が、憎い?」
ぽつり。真那白がつぶやいた。
「…殺したい?」
「…何が言いたいの真那白」
あんたがわかんない。
「…、ここに、来るとね…神も、信じてない俺が、悲しみを感じるんだ。死んでも、楽園に入れない俺は…、永遠に会えない」
あの、人に。
どうやって、償えば。
男が、涙を流した。
僕を散々玩び凌辱した、男。
でも…。
その行為の中に、肉欲以外の何かを今は感じている。
「真那白…?」
「…あん、し…。俺を」
殺して…?
男は心を病んでいる。
虚ろな瞳は、澱んだ闇の色。
「何言ってんだよ…?真那白?」
「俺は、ひとをころしてるんだ…」
***********
天空の怒り
非創造の禁忌の愛
黒い翼
永久の苦しみ
鎖に繋がれし四肢
魂の牢獄
「あいしてる」
お願い、赦して
ハインは泣き続けています。
闇の深淵で永久に。
神さま、神さま
彼を赦してください…
最初のコメントを投稿しよう!