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真那白は、横たわったまま、つらつらと「独り言」を話し始めた。
何も見てない。そこには僕はいない。
「……、……、……」
幼い頃、母親に虐待をされたこと。自分を売り飛ばそうとしたチンピラを殺し、母親をも殺そうとしたこと。「施設」に入れられたこと。更正とは名ばかりの牢獄…。
社会に出てからは売春宿のような場末のバーで働いたこと。そこで客をとっていたこと…
「…何もかも嫌になってね、街をふらついて…路地裏で、ナイフで手首を切ったんだ」
ハタチの時だったかな。
冷たい、雨が降ってた。
真那白の、独白は続く。
「血が、水溜まりに滲んで…、染まって…」
すべての音が遠ざかって。視界が滲んで…
眠たく、なった。
「…あのまま死んでしまえばよかった。でも…」
助けられたんだ。
マリアに…。
「梓さんが…俺を拾った。この憎い容姿を…利用して生きる術を与えて…俺を地獄から引き上げてくれた」
人並みになれた。汚くない金を稼げることがこんなにも幸せなのかと感動して…
「…ある日梓さんは俺に言った」
お願い、協力して…
僕はぎくりとした。
その子供、は…
「…恩を返せると思った。俺は、きっと生まれてくる命を護れると…」
自惚れていた。こんな薄汚れた手で、愛する者を護れるとでも?
「それでも…護りたかったんだ。君も彼女も子供も…」
はらはらと剥がれ堕ちる、真実と現実。
この美しい男には、一体いくつの鎖が巻き付いているのか。いつまで茨の中、血を流し続けるのか。図り知れない、罪を。
償えば。解放される…?
「真那白…」
僕にも。罪ならあるんだよ。
言えば悍ましいと吐き捨てられる程の罪が。
真那白。逆にあんたに聞きたい。あんたは…
「…真那白。母さんの腹にいた子供はね」
僕の、子供なんだよ
真那白の目が驚愕に見開く。息を呑む。
「母さんと、寝たんだ」
ニッコリと、笑った。
きっと、歪んでるけど。
「Sexしたんだよ、実の母親と」
あはは…固まった。
「真那白。これでも…」
僕を嫌悪しないかい?
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