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堕天使
俺がゲイになったのは、女性が苦手だから。母親に虐待されたせいで、女性に恐怖と不信を植え付けられた。
けれど、あの人は違った。俺を理解してくれた。まさに、聖母マリアのような…
闇紫の母、梓は、俺のたった一人の女性の親友だった。彼女は強く、明るく、周りのすべてを引っ張っていくヒトだった。
…お願い、協力して…
彼女が、そう縋って来た。あの強い彼女が。
腹に、子を孕んでいると言った。この子を産むために、芝居をしてくれと。俺は、断ること等できなかった。
彼女は、命の恩人だから。
余程、世間に公には出来ない人間の子供なのだろう。彼女は籍を入れた後でさえどこか怯えていた。パパラッチや記者達の目から隠れ、彼女は一歩も外へ出ようとしなかった。
お腹の子供の、定期検査以外は。
あれは、雨の日だった。着いて行くと言った俺を、彼女は断った。
…大丈夫よ真那白。一人で行って来るわ…
そして、彼女はパライソ(天国)へ旅立った。
ああ、罪深き我が両腕。
闇紫への思いは、最初は兄が弟に持つような愛だった。しかしそれがいつしか情愛になり、歯止めが効かなくなった。
ああ、罪深い我に怒りの鉄槌を
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