堕天使

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コチコチ、秒針が音をたてている。いつのまにか、時刻は深夜を廻っていた。 「う…、少し、根を積めすぎた…」 ワープロとにらめっこを一時中断して、目薬を瞳に一滴ずつ、落とした。 こめかみがズキズキする。 「あ~、ここまでにするか」 ワープロの文章を保存して、電源を落とした。 仕事を終えると、急に眠気がきた。少し疲れているのかもしれない。そろそろ、三十路だ。もう若くはない。 廊下を横切って、三番目のドア。俺の寝室。 最初から、梓とは部屋は別だった。 入ると、ベッドが一つ、棚が造りつけで一つ。 シンプルな部屋。 俺はシャツを脱いで、ベッドへ横になった。 眠りは、すぐ訪れた。 *********** …ママ、やめて、痛い!… 恐ろしい夜叉のような顔をした女が、幼い男の子を殴りつけている。髪を振り乱し、喚き、少年の上に馬乗りになって押さえつけ、頬を殴り続ける。 『この悪魔!あんたなんか産むんじゃなかったわ…あんたのせいで私は葵に棄てられたのよ!』 少年は泣きながら謝り続ける。 …まま、まま…ごめんなさい、ごめんなさい! 赦して…っ 少年の顔は真っ赤に腫れ、青痣ができた。女は狂ったように叫び続ける。 『疎ましい子!あんたもあいつにそっくりよ。その綺麗な顔で女をたぶらかして…ああ、憎い!』 女は夫に棄てられた。ほかに女を作り、夫は出て行ったのだ。 そして少年は父親の美貌を受け継いでしまった。 俺は母親を、殺しかけたことがある。
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