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「行ってくる」
いつものように家を出るが、私を送り出す返事は聞こえては来ない。
早朝5時半、妻と娘はまだ寝ている。
私の一日はこうして始まる。
片田舎に所帯を持つ私が、都心にある職場まで通勤するとなると、どうしてもこの時間に家を出なければ間に合わない。
まだ朝靄が立ちこめる時間帯に私以外の人影は見当たらない。
最寄りのバス停まで徒歩で数分、私は少し駆け足気味で向かっていた。
1日に朝、昼、晩の3本しか走っていないバス乗り遅れると、確実に会社に間に合わなくなってしまう。
少しするとバス停が見えてくる。
バスもまだ発車していないようなので、私は歩幅を縮めた。
バスに乗り込みバス内を一瞥するが、相変わらず乗客は私ただ1人だった。
呼吸を整えながら、私は後部座席へと足を向ける。
時刻は5時43分、発車まで残り2分。
私はいつもどおり『とんとんバス』に乗車した。
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