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近藤さんは光明院に行き、屋敷には私と歳と尾形さんの3人が残っていた。
朝から言葉には出さないけれど、不安からか皆落ち着きが感じられなかった。
お昼頃になり、私が光明院で訓練している隊士達に軽食でも作りに行こうと外に出ようとした時、彼等はやってきた。
分かってはいたけれど、兵の数に驚いた。
その中でも一際目立つ、どっしりと構えた男の人が私に話しかけた。
「薩摩藩、有馬藤太ち言います。
大久保大和さんに会わせていただきたい」
訛りの強い独特な口調。
私はごくりと生唾を飲んだ。
「…大久保は今、少し離れた場所におります。
少々お待ちください」
私は一礼してから、すぐに中にいる歳と尾形さんの元へ向かった。
「誠!」
すでに二人は薩摩藩が来ていることに気づいていた。
歳は私を部屋に招き入れる。
「大久保さんに会わせてほしいと、薩摩藩の有馬藤太さんが来ています」
「断れば怪しまれるでしょう。
隊旗など、我々が新選組と分かるものは屋敷内に隠してありますし、すぐにご案内した方がよいかと」
「…よし。尾形、お前は念のためここに残っていてくれ。
誠、お前は俺と一緒にその有馬って奴と光明院に行くぞ」
「わかりました」
時間をかければそれだけでも疑われるかもしれない。
私達はすぐに行動に移った。
歳の後を追って玄関に向かう。
「お待たせしてすみません。旗本、内藤隼人と申します。
うちの手伝いをしているこちらの井上から聞いたとは思いますが、大久保は只今離れた場所で調練をしておりますので、ご案内致します」
“井上”とは私のことだ。
源さんの名字を貸してもらった。
龍馬さんの日記に私の名前が載っていること、京の町に隊士と出ることが度々あった為本名を伏せた方がいいという歳の判断だ。
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