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――ピピ…ピピピ…。
「うー……」
いつも通り、目覚まし時計の電子音で目が覚めた。
今は4月。
ベッドからはまだまだ出にくい頃だ。
――ピピピピ……ピピピピ……。
だけど、目覚まし時計は俺を寝させてはくれない。
早く起きろー! 遅刻するぞー! といった感じに電子音を響かせ続ける。
「……うるさい……」
だけど、俺には関係ない。
止めればいいだけの話だ。
そうすれば、この電子音は止まって、俺をまた、寝させてくれる。
だけど、世の中そう上手くは出来ていない。
毎回だ……。毎回、寝ようとするたびに"アイツ"がやってくる。
俺のこの幸せな一時を壊すことが大好きな"アイツ"が。
いきなり話が変わるが、誰かが言っていた気がする。
悪いことは考えるべきでないと。
考えると本当に起きると。
この時は本当にそう思った。
"アイツ"のことを考えた瞬間、一階から"アイツ"の声が聞こえてきたからだ。
『おばさん! アイツ起きた?』
『あらあら、早苗ちゃんごめんなさいね~。あの子まだ起きてないの~。起こしてもらえる?』
お袋、頼むからソイツを俺の部屋に来させないでくれ…。
ドタドタと、早苗が階段を勢いよく登る音が聞こえてくる。
コレがギャルゲとかなら、可愛い幼なじみが優しく起こしてくれたりするだろう。
といっても、俺は実際にはやったことない。
あるヤツの受け売りだ。
そんなことを考えていると、早苗の足音が俺の部屋の前で止まる。
早く起きなければ、俺のあばらが早苗におられる。
だけど、ベッドから出ることが出来ない。
俺がベッドの温もりと格闘していると、部屋の入り口の前で足音が止まった。
…………来るか……。
「ゆ・う・き! 起っきろー!!」
勢いよく部屋のドアが開き、早苗が俺のベッドの上にダイブしてくる。
「ぐふぁ!!!」
ミシミシと、俺のあばらとベッドが音を立てる。
「早く起きろー!! 朝だぞー!!」
早苗は、俺の腹をめがけて殴る。
そのたびに、ベッドと俺のあばらが、ミシミシと音をたてる。
「おき、起きたから……殴るの……止め……」
俺が殴られながらそう言うと、早苗は殴るのを止めた。
「アハハ! もう、早くしないと遅刻するよー!!」
「分かったから、俺の上から降りてくれ……」
「了解です。隊長!」
早苗はそう言うと、ようやく俺の上から降りてくれた。
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