2/3

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
休憩が終わり、青年が席に就いた。先程まではこの現実世界に絶望して居た青年は、曲に夢中になって居る。ステージ上の誰もが夢中になりながらスパークして居た。そして、青年も密かにスパークして居た。 特に名誉教授の指揮者が最も気を解放して居た。青年は前曲同様に“親友らしき”青年奏者とその前の席に居る女奏者に気を盗られながら、曲に集中する。女奏者だが、大分アグレッシブだった。であるからして…、例の青年奏者と事在る毎に被って来る。どんだけアピールしたいのか判然としない。呑みならず、椅子と共に暴れ出す。指揮者が中断し、壇上から降りる。ハンカチーフで顔を拭き、再び壇上に登ってタクトを振る。 完全にスルーしている。これが何度かあった。その度に青年は、“何か”を期待する。その“何か”とは、当然女奏者への粛正である。全体的に整った体型を有して居る割には、少々がさつな面も持ち合わせて居るらしい。 きっ…きっ…と椅子が唄う。楽器が奏でられる。タクトが踊る。青年が少しく癇癪を興す。その度に血流も逆上に陥る。気になって曲に集中出来無い。奏者は旋律を芳しくする。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加