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「…あぁ。
めっちゃ幸せだった。
今まで味わったことないくらい、幸せだった…」
彼は悲しく淋しく微笑んで、私の頭に手を伸ばした。
ぽんって置かれた手は、とてもか弱く儚く感じて。
「今までありがとう。
…元気で」
そういって手を離し、私のもとから去ってった。
私の頬には暖かい感覚。
それはすぐなくなって冷めて、そのまま落ちていった。
私はいつの間にか自分の部屋にいて、どうやって帰って来たのかも分からない。
机にある彼からもらったお揃いの香水に手を伸ばして匂いを嗅いだ。
「…っ!!
和、輝…っ」
彼と同じ匂いが頭の中の思い出を引きずり出してくる。
涙が溢れてとめどなく流れていく。
目を閉じれば彼の笑顔が写し出される。
その夜は彼が頭から離れなくて、ずっと止まることなく泣き続けた。
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