第一話 ファーストキスは潮の味?

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「やっぱり海はいいよね」  瀬戸内海をいくフェリー船の通路で、一人の少女が海を眺めながら呟く。  外見から見た年齢は十四か十五くらいだろうか。  背は同年代に比べるとそれなりに高く、手足もすらりと長くて、触れれば折れてしまいそうなほど細い。  肩まで伸びた髪は輝いて見えるほどの見事なブロンドで、肌は透き通るような白、瞳は海のように澄み切った青。  その容姿はまるで人間ではなく、高名な人形師によって作られた芸術品のようで、美少女と呼ぶにふさわしい美しさだった。  ただ……。  少女が着ているのは迷彩柄のシャツにジーンズという服装で、少女の容姿には似合っておらず見る者に違和感を感じさせた。 「海を見ていると心が落ち着く……。このままずっと見ていても飽きな……うわっ?」 「きゃあっ」  潮風を気持ちよさそうに浴びていた少女だったが、突然腰に何かがぶつかった思うと、下の方から子供の声が聞こえた。  声がした方を見ると、そこには十歳くらいの女の子が尻餅をついていた。  おそらく通路を走っていた時にぶつかったのだろう。  少女は尻餅をつく女の子に手を差し伸べて助け起こす。 「大丈夫?」 「うん。おねーちゃん、ありがとう」 「おねっ!」  女の子の言葉に少女の顔がひきつる。 「……………………じゃない」 「え?」  少女が蚊のなくような声で呟く。 (俺はおねーちゃんじゃない! 俺は! 俺は『男』なんだよ!!)  流石に女の子に怒鳴るわけにもいかず、少女……いや、『少年』は心の中で絶叫する。  彼の名前は礼雄(レオ)・ロビンライト。  日本人の母とイギリス人の父をもつハーフの少年である。
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