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「ちょ、ちょっとキミ! 一体何をしているんだ!?」
礼雄は手すりに駆け寄ると、少女の肩をつかんで呼びかけた。
「………」
肩をつかまれた少女はゆっくりと礼雄のほうに振り返る。
年齢は礼雄と同じ十四か十五くらい。
顔は片手でも隠せそうなほど小さく、形のよい眉や鼻といった各パーツが理想的な位置におかれている。
その整った顔立ちは、礼雄とはタイプが違うが十分、美少女といえるだろう。
今まで泣いていたのか目が赤く、目元も少しはれていたが、それでも美しさは失われていなかった。
「あ……。……えーと。そ、そうだ! 何があったかは知らないけど、そこにいるのは危ないから早くこっちに……」
「おねーちゃん。一人で何してるの?」
不覚にも一瞬見とれてしまった礼雄は黒髪の少女を説得しようとするのだが、途中で後ろから声をかけられた。
後ろにいたのはさっきぶつかった女の子だった。
「何しているのって……」
そこまで言って礼雄は女の子の言葉に違和感を感じた。
(今、あの子「一人で」って言わなかったか?)
「……ねえ、ここにお姉ちゃんがいるよね?」
礼雄は黒髪の少女を指差して女の子に訪ねる。
だが女の子は不思議そうな顔で首を横に振る。
「いないよ? おねーちゃん一人だよ?」
「…………!?」
女の子の言葉を聞いて、礼雄の背中に冷たいものが走った。
「………え?」
もう一度、黒髪の少女見ると、彼女は右手で礼雄の手を掴んでいた。
そして黒髪の少女は手すりを掴んでいた左手を離し、体を前に傾ける。
結果、黒髪の少女の体は海に落ちた。
手を掴んだ礼雄と一緒に……。
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