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筑島沙代子が目を覚ましたのは、固い木の椅子の上だった。
周りは暗闇。目の前の木のテーブルにだけどこからともなくスポットライトが照らされていた。
はっとなって体を動かそうとした時、暗闇の中から一人の若い男の顔が浮かび上がってきた。
「はじめまして筑島沙代子さん」
「ここは……どこなんですか?私は確か、部屋のベッドで眠っていたはず……」
沙代子の胸がざわざわと音を立てるように脈打った。
目の前の男がふわっと顔を歪め、まばゆいと感じる程柔らかい笑みを浮かべたからだ。
「私は『木馬』と申します。
貴方にはこれから少しの時間私とゲームを付き合っていただきます」
「ゲーム?」
沙代子が聞くと彼の背後から黒いジャケットを着た女性が現れ、平べったいケースをテーブルの上に乗せた。
「こちらは『吊り子』といいます、よろしく。
ゲームとはルーレット、つまりギャンブルです。
ただし普通のルーレットとは少し違います」
そういうと木馬と名乗った男はケースの蓋を開けた。
そこにはよく見るルーレットが現れた。しかし見たところ何も普通のルーレットと違う所はない。
「このゲームは10ゲームまでです。
その10ゲーム終了までに貴女が一勝でもすれば貴女の勝ち。そこでゲームは終了です。
1500万円を差し上げます」
1500万円という額を聞いて沙代子ははっとなった。
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