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「ほんとに……1500万円を?」
沙代子は木馬の目を下から覗き込むように訊いた。
「はい。もちろん」
沙代子は胸の奥から息を吐いた。
そしてすぐに唾をゴクリと飲み込んだ。
「それじゃあ、私が賭けるのは?私にはお金なんて全然……」
「貴女が賭けるのはお金ではありません」
そう言う木馬の目は一瞬、木枯らしのような冷たさを纏った。
「貴女が賭けるのは貴女の大切なモノです。
リストをご覧になりますか?」
そう言うと傍らに佇んでいた、吊り子と呼ばれた女性が一枚の羊皮紙をくるくると開いた。
沙代子はリストを上から下まで順に目で追った。
「どういう事!?」
「この番号はルーレットのノワール、つまり黒の番号です。
玉がこの番号に落ちた場合、その番号のモノを私達が頂き
ます。
それが貴女の持ち札になります」
体の奥でドクンと激しい脈がなった気がした。
沙代子は思わず席から立ち上がり、木馬に向かって食いかかった。
「冗談じゃないわ!いくら金の為だからって、そんなマネできるわけないでしょ!」
額から冷たい汗が流れるのを感じた。木馬は沙代子の剣幕になんらおじける事なく、おだやかな笑みを浮かべている。
「申し訳ありませんが、貴女にはこのゲームを棄権する権利はありません」
木馬が言うと吊り子は羊皮紙をくるくるとしまい、また別の紙をどこからともなく取り出して沙代子の目の前に突きつけた。
そこには『神無景子』とサインの入った契約書があった。
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