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「ママの名前……」
「神無景子さんもこのゲームに参加いただきました。
しかし一勝も出来なかった為、次の参加者として貴女を紹介頂いたのです。
貴女にも10ゲーム全敗した場合、この契約書を書いていただきます。
貴女の命と引き換えに」
あまりの事に沙代子は言葉を失った。
「どんな賭け方をしてもかまいません。
一点賭けでも、奇数・偶数でも、赤・黒でも。
たったの一勝です。それほど難しい事ではないでしょう」
確かに10ゲーム。奇数・偶数や赤・黒賭けをすれば2分の1の確立で勝つ事はできる。
それで大金が手に入るのだから。
しかし同時に2分の1の確立で沙代子は大きな危険を抱える事になる。
いくら借金を返済したいからといって、こんな馬鹿げたギャンブル等できるわけがなかった。
「結構です……やりません。早く帰してください!」
沙代子はそういうとテーブルを離れ、暗闇の先へと走り出した。
数メートル走った所で壁にぶつかり、沙代子は反動で床に転がった。
「痛っ……」
唇の端を切ってしまったようだった。
触れると生暖かいぬめっとした触感があった。
「この部屋に出口はありませんよ。貴女はゲームを終わらせるまで帰れません」
そんな馬鹿な。
沙代子は壁に手をつき、手探りで出口を探した。
何もない。ドアらしき物も何も。部屋のテーブルを囲むように四方は壁に囲まれている。
では一体自分はどこからこの部屋に入ったのだろう……
隠し扉のような物があり、それは彼等にしか開けられないのかもしれない。
そうだとすれば、自分は完全に監禁されている事になる。
ふと背後でガタンと音がした。
木馬の立っている床の横に、さっきまでなかった銀色に光るアタッシュケースが転がっていた。
「こちらが1500万円になります。さぁ始めましょう」
木馬がケースを開けると、そこには札束の山があった。
沙代子は息を呑んだ。
目の前に大金が現れたからではない。
そのアタッシュケースがあたかも、部屋の上から落ちて来たように見えたからである。
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