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沙代子の元に吊り子が歩み寄り、その背中をそっと机の方へ押した。
ふらふらと沙代子は自分が座っていた椅子に向かった。
「一つきいていい?」
木馬は目を瞑り、はいと返事した。
「私が黒に賭けて、玉が黒のどこかに入った場合は私の勝ちなのよね?その場合はどうなるの」
「いい所に気付かれましたね。そう、もしその賭け方で貴女の勝ちであるだけであれば、貴女はただ黒に賭け続ければいい。
犠牲を出さずに確実に勝つ事ができるでしょう。
しかしそれではゲームが成り立ちません。
その場合は貴女には賞金の1500万が、
同時に私達にはその番号のモノが得られる事になります」
得られる、という奇妙な言葉に違和感を感じつつ、沙代子は静かに頷いた。
「勝ち負けに関係く取られるモノは取られるって事なのね…」
「いいえ、勝ち負けに関係ないわけではありません。一つだけ例外があります。
一点賭けです。それで貴女が勝った場合は、そのナンバーの代償は頂きません」
なるほどと呟いて沙代子は椅子に腰掛けた。
机の上に両腕を置くと、腕時計が机に当たってカタカタと鳴った。
全身が痙攣しているかのように震え続けている。
「それでは始めましょう」
木馬は席につき、右手にすっと玉を握った。
1ゲーム目のルーレットが回り始めた。
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