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仕方ないと、数メートル離れた場所にある自分達の車に向かって歩き出した。 「桐生さん、これ……」 振り返るとまたさっきの鑑識の男が息を切らせながら後を追ってきていた。 「神無景子の預金通帳が出てきました」 はぁはぁと肩で息をしながら、男は申し訳なさそうに言うと、緑色の預金通帳を亮輔達に差し出した。 『残高0円』 しかも数百万の預金がごっそり引き出されているのは昨晩の1時。 ますます複雑化する事態に亮輔はこめかみを抑えて唸った。 「さっき仏壇の中から出てきたんです……」 男の方へは振り返りもせず、亮輔は須藤に言った。 「ママは確か多額の借金を抱えていた。 これはヤクザがらみか?ただの強盗じゃなさそうだ」 「ただの強盗なら銀行の金を昨日の1時に引き出したとしても、預金通帳に記入してわざわざ戻すなんて事はしませんよね。 借金がらみだとすれば預金通帳の貯金を、被害者に引き出させたりするかもしれませんが…… 財布の中の小銭まで取りますか?」 亮輔はおもむろに首を振った。 「わからない。でも神無景子の財産が一晩で、小銭も残さずごっそり消えたという事実は確かだ」 「一体誰が何の為に……どうやって」 亮輔は鑑識の男に礼を言って通帳を返した。 「余計な事は一旦忘れろ、本店様達がお呼びだ」 亮輔はすばやく車の運転席に乗り込むとエンジンをかけた。
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