ダインルーレット

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「こんなの……イカサマよ!」 そう、ゲームは10試合。 10回のゲームで女性は赤か黒の、二分の一の確立に賭け続けていた。 しかし結果、勝率は0。 男は……まだ若く整った顔立ちに澄んだ高い声を発っした。 「イカサマはありません。 最初に言ったように、これは貴女自身のカルマとの戦いです。 大切な物を沢山賭けていながら、貴女自身それ以上の『力』を引き出せなかった…… 大変残念な事です、神無景子(カミナシケイコ)様」 日に焼けていないかのような真っ白な肌は、彼が常識的な社会生活に身を投じていない事を表していた。 裏稼業……やくざの類の者なのかと景子は思っていた。 しかし時折見せる、背筋が凍りつきそうなあの笑み。 「すればいいんでしょ、サイン!」 半ば投げ槍に声を荒げた景子は、手早く契約書にサインをすると その契約書の文字を初めから目で追った。 ……とんでもない事をしてしまった。もう引き返す事はできない。 その思いはゲームの途中から景子が感じていた事であったが、契約書を見て恐怖がより一層、現実味を帯びた。 「イヤ……いやああぁああ!」 激しい嗚咽をあげてその場に再度泣き崩れる景子の脇から、 女性の手がすっと伸び、サインの入った契約書を取り出した。 『私、神無景子は経営する【マリブ】従業員、筑島沙代子のダインルーレット参加を承諾します』
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