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朝の通勤に急ぐ人込みに囲まれた都心の中の公園。
手入れがあまりされていないのか、植木の枝は伸び放題で、朝日を遮る暗がりを作り出している。
ペットボトルやコンビニの弁当の空き容器等が無造作に散乱し
子供が無邪気に遊具で遊ぶ光景とはかけ離れた、薄汚い印象を覚えた。
桐生亮輔(キリュウリョウスケ)は近くにあったベンチに腰かけ、缶コーヒーを煽りながら、数メートル先のブルーシートを眺めた。
「桐生先輩、遅くなりました」
一人の若者がいそいそと亮輔の傍らに駆け寄ると、口早に挨拶を済ませた。
「ここへ来る途中、5丁目の現場にも寄ってきました。ひどいものです……
遺体は例のごとく……」
そこまで言うと後輩の須藤は眉根を寄せて口ごもった。
「全身複雑骨折、内臓破裂か。
これで10件目。
一体、昨晩の千鳥町には何が起こったんだろうな……」
亮輔は続きを代弁してやると、手元の缶をベンチ裏のゴミ箱にぽいと投げ入れた。
「困りますよ桐生刑事。まだ現場の鑑識が終わってないんですから」
背後から警視庁とロゴの入った、厚手のジャンパーを羽織った中年男性が現れ、
亮輔の投げ入れた缶を籠からトングで拾い上げた。
申し訳ないと頭をさげ、ベンチから立ち上がった。
亮輔は須藤を後ろに従え、公園の奥にあるブルーシートの方へ足を踏み出した。
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