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亮輔は受け取ると二つ折りの携帯を開いた。
ディスプレイに麻紀の着物姿が写しだされた。七五三の記念に撮ったものだろう。
亮輔は携帯ボタンを操作し、通話履歴を開いた。
『……黒峰幸子
……小池学
……白川富士子
……黒峰幸子
…… 』
そこにはかけた日時も頻度もバラバラではあるが、亮輔の覚えのある名前が次々と連なった。
「これは……ほとんどが昨夜の事件で亡くなった人物だ」
呆然と画面を見入る亮輔の傍らから須藤はディスプレイを覗きこんだ。
「事件の被害者は皆千鳥町の人物ですからね。仕事柄つながりがあっても不思議じゃないんじゃないですか?」
確かに須藤の言うとおり、昨夜の被害者は皆、千鳥町歓楽街で働いている者であったり、出入りしている業者の者である。
神無景子と繋がりがあってもなんら不思議はない。
それでも不吉な違和感を拭えない亮輔は更に携帯を捜査し、番号登録リストを開いた。
「やっぱりおかしい……この登録リストの1番から10番まで、昨夜の被害者と一致してる」
「登録の順番がですか?」
須藤は首を捻り呟いた。
「やはり殺人事件の方と繋がりがあるんでしょうか」
「これだけじゃわからないけど……もう少し神無景子の身辺を当たってみた方がいいかもな」
亮輔が訝しげに呟いた後、鑑識の男が一人、腰を屈めながらやってきた。
「桐生さん、火は屋内から出てます。放火の疑いはないでしょう。まだ火の原因は特定できていませんが、
寝る前に不始末な火元があったと思われます」
放火の疑いがないとなれば火事の捜査はすぐに終わる。
これ以上下手に遺品を触る事もできなくなるだろう。
亮輔は少し思案した後、玄関奥の階段を見上げて言った。
「上にあがってもよろしいですか?」
「上ですか?特に何もないと思いますが……」
男は訝しげに応えると階段の上を見上げた。
「すいません、こちらの被害者は先輩の知人なんです。少しだけお願いします」
須藤が男に頭を下げているうちに亮輔はすっと靴を脱ぎ、奥の階段へと向かっていった。
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