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高校から出された課題を最終日までため込み、最後の最後で課題漬けになっていた春休みをなんとか乗り切り、俺はいよいよ入学式の日を迎えた。
三度寝してしまうほどの心地よい布団にはずっとくるまって居たかったが、あいにく8時半には学校へ着かねばならない。
仕方ない…とようやく布団とおさらばを決意し、勢いよく掛け布団を放り、目をこすった後重要なものに目をやる。え~と、現在の時間はと…
―――8時30分
俺は起きた5分後には家を出ていた。
チェーンが切れそうなほど猛烈にチャリをとばし、肩で息をしながらようやく学校に着いた。学校まで特に坂などはないが多少距離がある。普通にチャリをこいだら15分程度かかる。
朝一から疲れきった顔を校舎の時計に向けると、時計の針は8時25分を指していた。
自室の時計の15分の時差を忘れていて無駄に疲れが溜まったまま入学式に入ったため、校長の話や上級生の話は聞こえてはいなかった。
クラスでの自己紹介や連絡事項を一通り聞き、新しい友人も何人か出来、満足していた帰り際に一人の男子が声をかけてきた。
『よっ!お前上沢 諒(カミサワ リョウ)…だっけ?俺は…』
坂田 創(サカタ ハジメ)だろ
『覚えててくれたか!嬉しいねぇ!まぁ用件は一つ、友達になろう!』
別にそんなこと宣言してからなるもんでもないと思うがな。変な奴だ。
帰り道が同じ方向ということもあり、途中の公園で中学時代のことや部活のことなどをしばらく話した後、創とは別れた。
夕日が空を朱色に染め、月が夕闇を連れてくる。そんな日の帰り際に出会い友達になった変な奴“坂田 創”
今思えば、この時友達になっていなかったら、俺のあの高校生活はどうなっていたんだろうな。
それほど重要な、そしてかけがえのない友人を手に入れた。
入学式の日のことだった。
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