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「だったら尚更……」
「尚更、さね。私は……そういう人たちにはできるだけ関わってほしくないんだよ。自分自身がどんなヤツか……何をしてもダメなヤツってのは……良くわかってるからさ」
「……?」
真剣な面持ち。普段ならば適当にあしらうことも、暢気に聞き返すこともできる。
だが今はそうさせてくれない。春風の言ってることが、どうしても理解できない。
「……私、帰るね。小町さんたちも心配してるだろうし……スウェットは……まぁ、また会った時に返すよ。大丈夫。今度は間違いなく真っ直ぐ帰るから」
春風はぶっきらぼうに手を振りながら俺に背を向けた。
終始作り笑いなのはわかった。そんな春風に対して……何をすればいいかわからなかった。
「お、おい春風……」
「明日も学校があるんだから早く帰りなよねぇ。じゃあねぇ純一」
去るのは早かった。走って走ってやっと見つけて、結局何もわからないまますぐに別れる、か……
結局、春風を見つけて何をしたいのか。自分でも良くわからなくなっていた。
春風がいなくなった住宅街。俺はしばらく、何をするでもなく立ち尽くしていた。
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