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透き通るような甘い声で囁かれた「青山クン」。
その声の主は綺麗に染めた金髪を2つに高く結び、所謂ツインテールを揺らしながら教室に入ってきた。
「きーチャン」
「おはよ、青山クン」
青山に"きーチャン"と呼ばれたこの少女こそ、黄瀬きいろこと青山の現在の彼女さんである。
…初めて会うのに何故私がこの少女を青山の彼女だとわかったか知りたい?
………え?興味がないとか言いながら、何気に青山のことが気になるからではないのか?
てめえ、その腐れた思考と言動を生む脳みそを今すぐ破壊してやろうか、あ?
───私がこの少女が青山の彼女だと気づいたのは、青山が彼女のことを"きーチャン"と呼んだからだ。
青山は自分に彼女が出来るたびに、毎回私に報告しに来るのだ。
ウザイぐらいに報告しに私の元へ来る。
探してまで来る。追いかけて来る。
今の彼女はマヤちゃんだの、シオリに告白されただの。
毎回、毎回、毎回毎回毎回毎回…。
……………マヤかシオリか知らないけど、私はその子の顔どころか名前すら知らないっつーの。
そんな青山が1週間ぐらい前に再び報告しきた。
最初は私も逃げて撒いたり、殴って蹴って撃退したり、色々と手は打って青山を追い返そうと努力した。
しかし、飽きず私を追いかけ回し報告をする青山に折れた私は、一応話だけは聞いて流すようになった。
『俺、きーチャンと付き合ってるんだ』
『きーチャン?』
『黄瀬きいろって女の子。結構可愛いしモテるんだよ?』
『そうかよ』
もちろんその時も軽く聞き流したが、その妙にインパクトの強いあだ名が印象付けられ、いつの間にか覚えていた。
それが青山の今の彼女、黄瀬きいろ。あだ名は"きーチャン"。
「青山クン、今日はお勉強作ってきたんだよ。お昼一緒に食べよう?」
キラキラ天使の微笑み。
これが噂の天使の微笑みとやらか。
どうやらモテるっているのは嘘じゃなさそうだ。
あんな可愛いらしい笑顔で笑い掛けられたら、大半の男たちはノックアウトだろう。
しかも、手作り弁当だなんて本当に可愛い彼女じゃないか。
こんな女の子に男たちは弱いんだろうなぁ…。
「ごめん、きーチャン!嬉しいけど俺、茜の手作り以外は食べないから!」
この青山清一郎以外はな。
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