最低の夜に最悪の男前

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三階建て校舎の南館 階段を登ってすぐ突き当たりの 『音楽室』 そこは、 大嶋陽奈子(オオシマ ヒナコ)の 一番大好きな場所 ウチの居場所なんです。 「ソプラノ!ピッチ低い!声出てない!そこもーちょっとクレッシェンドかけてきて。」 ズンッと体を圧迫される厳しい声で、楽譜から目を話さず指先と腕で正確にテンポを刻んでいく。 それに言葉に答えるようにソプラノはピッチを上げて、口を更に大きく開いて声量を増やしていく。 先生のしなやかなその腕の振りで90人の歌声が重なり絡み合って、メロディを作り出していく。 弦をピンと引いたような緊張感の中でウチの声もメロディに融けていく。合わさっていく。流れてく。 あー なんて気持ちいんやろ。 .
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