-月下の出逢い-

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朔の身体を包む光が徐々に落ち着き始め、そっと目を開けると、そこは僅かな違和感を覚えたものの、変わらず、壬生寺の境内のようであった。   しかし辺りは真っ暗であり、どれだけの時が過ぎたのかは定かではないが、かなりの時間が経っている事だけは確かなようだ。   空には満月が煌々と輝いており、月の位置からしても夜更けであることは間違ない。   時折吹き抜ける風は冷たく、朔は自分の身体を抱き締めた。   「寒い…。いつの間に夜になったんだろう…」   天上の月を見つめながら朔は、ぽつりと呟いた。   月明かりは全てを優しく、静かに包み込むように、地上を照らしていた。 まるで傷を癒すかのような静かで優しい光。   朔は月明りが好きだった。 太陽は眩し過ぎる存在だが、月は違う。 優しい光りを放ち、夜闇を照らす。 まるで道標のように…
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