8319人が本棚に入れています
本棚に追加
/1046ページ
青年は朔と目が合うと、にっこりと笑いかけてきた。
笑うと随分と人懐っこい印象だ。
「こんばんは」
「…こんばんは…」
青年に声を掛けられ、朔は少し警戒しつつも返事を返した。朔が返事を返すと青年は、にこにこと笑ったまま再び口を開き言葉を紡いだが、その言葉は朔を酷く驚かせた。
「貴女は幽霊ですか?それとも生身の人間ですか?」
「………は?」
青年の言葉に朔は唖然とした。まさか幽霊と間違われるとは思わなかった。
と言うよりは、自分の何処に幽霊と間違われる要素があるのかと、真面目に考え込んでしまったくらいだ。
「すみません。どうやら生身の人間のようですね」
青年は、唖然とする朔を見て、小さく笑いながら腰掛けていた岩から立ち上がった。
「桜が光ったかと思ったら、貴女が現れたので、もしかして幽霊かと思ったのですが、違うみたいですね。まぁ…私、霊感全く無いので、私の目に見えるという事は人間ってことなのですが、不思議な人ですね、貴女は。光りの中から現れるなんて。何故桜が光ったんですか?着物も変わってますし、どちらから来たんですか?」
「…………」
朔は、にこにこと笑いながらそう問い掛ける青年に対して、どう答えたものかと考えた。
最初のコメントを投稿しよう!