-月下の出逢い-

5/25
8319人が本棚に入れています
本棚に追加
/1046ページ
桜が光ったなど朔自身、説明が欲しいくらいだったため、何故と問われても答えられる筈もない。   何処から来たのかと言われても、朔はずっとここ、壬生寺にいる。光りの中から現れた訳ではない。   ただ、桜が光り、その光に包まれていただけなのだが…そんな非現実的な話を真面目にするのも、ためらわれた。   目の前の青年も桜が光ったと言うのだから、実際そんな非現実的な現象が起きたのだろうが、朔は未だに信じられないでいたため、有りのままを話す事に抵抗があったのだった。   (それに、着物が変わっていると言われても…)   朔は自分の服装を見下ろした。普通の黒いシックなワンピースに淡い桜色のショールを羽織り、靴は編み上げのミディアムブーツ。   今時誰でも着ているようなもので、さほど珍しいとは思えなかった。 むしろ……
/1046ページ

最初のコメントを投稿しよう!