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朔が更に視線を巡らせると、壬生寺の北側にある隊士墓も、近藤勇の胸像も見当たらなかった。
壬生寺の周りの建物も違う。
境内からは現代のような鉄筋コンクリートの建物は見えず、まるで時代劇に出て来る様な建物が並んでいるのが目に映った。
その光景を見た朔の背中には、嫌な汗が伝う。考えたくは無い。そんな非現実的な事あるわけない。
そう言い聞かせるが、頭の隅では、なら目の前の景色をどう説明する?と問う自分がいた。
(…えっと…一体どうされたんですかね…急に何か考え込んでますが…)
急に黙り込み、何かを考え込んでいるかのような朔を見て、青年は不思議そうに首を傾げていたが、やがて何かを思い付いたように手をぽん、と叩き破顔した。
そして頭を掻きながら口を開いた。
「あぁ、すみません、つい好奇心から色々聞いてしまって。いきなり色々聞かれたら、びっくりしますよね。それに第一、お前は誰だって話ですよね。名乗りもせず、すみません」
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