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見当たらない街灯、電柱、そして電線。
見慣れた近代建物ではなく、時代劇で目にするような建物。
それらがここは現代ではないと告げている。
「…沖田…総…司?」
「はい」
震える唇で問い返せば、沖田総司と名乗った青年は笑いながら返事をした。
(嘘…)
朔は眩暈がしてきた。
タイムスリップなど物語の中だけで、現実には有り得ない。科学的にだって未解明であり、実現不可能とされている。有り得ない…
だが目の前の事実は、朔の常識を全て根本から覆すようなものばかりだった。
目に映る全てのものが、ここは現代ではなく、幕末時代で、朔はタイムスリップしたのだと告げている。
「新撰組…副長助勤筆頭の?」
朔は今にも消えそうな声で問い掛けた。どうか笑って一蹴して欲しい。否定して欲しい。
そんな一抹の願いを込めたが、それはすぐに絶望へと変わった。
「おや、私の事知っているんですか?」
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