-月下の出逢い-

9/25
前へ
/1046ページ
次へ
見当たらない街灯、電柱、そして電線。   見慣れた近代建物ではなく、時代劇で目にするような建物。   それらがここは現代ではないと告げている。   「…沖田…総…司?」   「はい」   震える唇で問い返せば、沖田総司と名乗った青年は笑いながら返事をした。   (嘘…)   朔は眩暈がしてきた。 タイムスリップなど物語の中だけで、現実には有り得ない。科学的にだって未解明であり、実現不可能とされている。有り得ない…   だが目の前の事実は、朔の常識を全て根本から覆すようなものばかりだった。   目に映る全てのものが、ここは現代ではなく、幕末時代で、朔はタイムスリップしたのだと告げている。   「新撰組…副長助勤筆頭の?」   朔は今にも消えそうな声で問い掛けた。どうか笑って一蹴して欲しい。否定して欲しい。   そんな一抹の願いを込めたが、それはすぐに絶望へと変わった。   「おや、私の事知っているんですか?」
/1046ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8324人が本棚に入れています
本棚に追加