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(離す訳にはいかないですよ)
こんな状態で放って置く事は出来ない。
沖田は更に力を込めて朔の腕を掴んだ。
「貴女が触られるのが嫌いなのは分かっていますが、今は離せません。お願いですから、少し大人しくして頂けませんか?これ以上力を込めたら、貴女の手に痕が残ります。…そんな事はしたくないので…」
朔が触られるのが嫌いなのは分かっているが、離せない。
これ以上暴れるのなら、朔の手に痕が残るほどの力を込める。それでも絶対に離しはしないと沖田に告げられ、朔は動きを止め、徐々に力を抜き、抵抗するのを止めた。
どんなに抵抗しても、非力な朔の力では沖田の力に敵わない。どんなに華奢でも沖田は男。力で敵う訳が無い。
相手が、朔の暴れ具合によっては手を離そうと思っているならまだしも、たとえ朔の腕に痕が残っても離さないと言う相手なのだ。
抵抗した所で無駄だろうと、朔も諦めた。
朔が抵抗を止めると、沖田は詰めていた息を吐いた。
「こんな夜中に女性を一人で帰す訳にはいきませんよ。帰り道は分かるんですか?」
それならば送りますから、と告げると、朔は静かに首を横に振った。
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