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警戒心を露にする朔に沖田は困った様な表情を見せた。
「こんな世の中ですから警戒するなって方が無理ですよね…。でも、帰る場所の無い人を放り出すなんて事は私は出来ないんですけど…」
「どうして?私が困ろうが、死のうが貴方には関係ないでしょう」
「こうして言葉を交わして、知り合ったんですから、それなりに心配になりますよ」
「言葉を交わしただけの人間をいちいち心配してたら身が保たないですよ?それに…そんな簡単に人を信じてたら早死しますよ」
素っ気なく告げた朔に対し沖田は一瞬その瞳に驚きの色を浮かべたが、次の瞬間には盛大に笑い出した。
「あっははははは!貴女面白いですね。貴女だって十分お人好しですよ!」
簡単に人を信じるなと忠告した挙句に、他人の生死まで心配している。立派なお人好しだ。
沖田は込み上げる笑いを押さえられず、腹を抱えて笑う。
そんな沖田を朔は憮然としながら見つめたが、沖田はそんな朔を余所に笑い続ける。
それこそ此所が座敷だったなら床を叩いて笑う勢いだ。
沖田は、ひとしきり笑うと目に浮かんだ笑い涙を人差し指で拭い、視線を朔へ戻した。
「大丈夫です。今確信しましたから。誰かを騙す様な人はそんな心配しませんから。それに貴女の言葉に長州の訛りはありませんし」
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