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新撰組の屯所ならば…取り敢えず暫くは食い扶持に困らないだろう。
沖田を信じるのではない。利用させて貰うのだ。
仮に裏切られたって、それは裏切りではない。
朔は沖田を信じていないから、裏切りようがない。
それに、沖田は副長助勤筆頭という立場だ。
日常に戻れば、仕事に追われ、いちいち女中なんかに構ってる余裕はなく、話しかけられる事も無くなるだろう。
朔は取り敢えずの住まいがあればそれで良く、誰かと関わるつもりも無かった為、沖田との接触が無くなる事は好都合ですらあった。
接触が無ければ、裏切るだの裏切られるだの、煩わしい人間関係自体が成立しないのだから。
朔がそんな事を考えていた時だった。
「貴女の名前、聞いても良いですか?」
朔が警戒心を僅かだが緩めたのに気付いた沖田が、その顔に微笑みを浮かべながら、名を尋ねてきた。
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