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そう言われても仕方が無かった。
皮肉混じりの言葉を投げ付けられる事は、受け入れていた。
それでも…大好きな母が付けてくれた名前だったから…
母に申し訳なくて胸が痛んだ。
(…お母さん…折角付けてくれた名前だけど…ごめんなさい)
母は朔に新月の様な存在になりなさいと言っていた。
新月の様に陰ながらも誰かを支えるような、しっかりとした人間になりなさい、と…。
(新月の様な存在は存在でも…お母さんの望みとは、まるで反対…)
母の望みすら満足に叶えられない。どうして自分はこうなのだろう…
朔は自己嫌悪に陥った。
「新月があるから満月が映える。新月の夜だから星は美しく輝く。新月があるから夜の世界は美しく輝くと私は思います。誰も気付かないけど、凛として美しく神秘的な存在だと思いますよ」
俯いていた朔は、不意に聞こえてきた沖田の言葉に弾かれたように顔を上げた。
顔を上げると月明りの下で、優しく笑う沖田の顔が見えた。
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