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朔が顔を上げたのを見た沖田は、優しく朔に笑いかけながら言葉を続けた。
「凛として美しく、神秘的で…貴女にぴったりの良い名前ですね。私は朔という名前、好きですよ」
そう言われ朔の瞳は僅かに揺らいだ。
そんな事を言われたのは初めてだった。
朔…新月を意味する名。
新月…そこにあるのに誰にも見てもらえない存在。
その名は朔自身を象徴している様で好きではなかったし、皆口を揃えて名前の通りだと朔に悪意ある言葉を投げ掛けてきた。
沖田の言葉は、同じ『貴女にぴったりの名前』という言葉でも…決定的に違った。
新月を綺麗だと言った。
新月の存在を見てくれた。
朔の名を好きだと…良い名だと、両親と兄以外で、悪意のない言葉を向けてきたのは沖田が初めてだった。
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