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憂鬱だ。
こんなはずではなかった。小学生のとき、中学生という存在は物凄く大きかった。勿論、単に身長が高いというのもあっただろう。
だが今はどうだ。これが中学生とは、笑わせる。いや、笑い事ではないのだが。
「どうした、啓太? 浮かない顔して」
「うっせえ。どうしたもこうしたも…………」
声の主である鈴木篤文の方へ顔を向けた千尾啓太は、思わず顔を歪めた。そのまま会話を止め、歩くスピードを速める。
「啓太~。どうしたんだよ? 機嫌直せよ~」
「機嫌を直してほしかったら……そのニヤケ顔を、やめろ」
ため息を吐きながら言うが、篤文の表情は変わらない。いっそぶん殴ってしまおうか。もっとも、殴るための拳は袖にすっぽりと収納されているのだが。
「にやけてなんかねえよ。プププ……」
「てめえ……」
「怒るなって。ガキだな、お前も」
「ガキ……?」
聞き捨てならない。篤文とは小学3年生からの付き合いだが、いくらそんな彼の発言とはいえ、今のは許せない。己のプライドに懸けて、許すわけにはいかない。
「歯ァ食いしばれ!」
啓太が篤文の方へ体を向け、袖を捲って右腕を振りかぶったその瞬間、額に強い衝撃を感じた。原因はすぐに分かった。篤文が腕を伸ばし、啓太の頭を押さえているのだ。
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