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体が前に進まない。そのため、腕を伸ばしきっても篤文には届かない。彼と啓太のリーチには、かなりの差があるのだ。
だからといって、後ろに体重を戻すこともできない。体重をかなり前に掛けた状態で止められたのだ。背筋力が全然無い啓太には、元の状態に戻ることすら不可能というわけだ。
「ほれ。悔しかったら殴ってみろよ」
「こんの野郎……」
挑発に乗り、啓太は腕を何度も前に突き出すも、それが篤文に届くことはなかった。130cmと160cm、身長差30cmの勝負だ。結果は見えている。
さっきまで、啓太の格好――ダボダボのブレザーを着て、腕が完全に袖の中へと収納されている格好――を見て、クスクスと笑っていた通学中の生徒達が、もはや何も気にせずに爆笑しているのが分かった。確かに、ハタから見れば、この光景はかなり滑稽であろう。
「謝ったら離してやるぞ?」
「何で俺が謝ることになるんや!」
謝らなければ解放されないと分かっていても、謝る気にはなれない。何故自分は悪くないのに謝らなければならないのか。
――誰か正義感の強い奴が、弱い者イジメと勘違いして篤文を殴ってくれへんかな……。この状況から解放されれば、俺だって篤文なんかには負けへん。まあでも、そんな奴がいるわけ…………
「おい、お前。弱い者イジメはやめろよ」
「…………へ?」
声のした方を啓太が見ると、そこには啓太と同じ制服を着た、ノッポが立っていた。
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