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野球がどういうスポーツであるのか、啓太は正直よく知らなかった。
仕事帰りの父親がよく、プロ野球のナイター中継を観る影響で、日頃から野球というものには接しているし、夏休みには田舎に帰省して高校野球をテレビで観るのが、毎年恒例になっている。だがそれでも、彼が直接野球に関わったことがないからか、詳しいルールなどは全く知らなかった。
「野球部に入るんか?」
「え? いや、そんなつもりはな……」
「そうか! 俺も野球部に入んねん! 今日の放課後、見学行こうぜ」
話しかけてきた瀬高は、啓太が発する言葉の全てを無視して話を進める。
啓太はため息をつくが、諦めて頷く。見学くらいなら悪くないと思った。
「分かったよ。で、瀬高は少年野球とかしてたのか?」
「ああ。こう見えても、4番やったぞ」
「いや、4番にしか見えへんけど」
苦笑いを浮かべながら啓太は返す。もちろん、瀬高のジョークだろう。
「千尾は、2番タイプやな」
「何や、2番タイプって」
「いや、体格的にな。2番打者っぽい体格やな、と。というより、クリーンアップって体格じゃないってことやけどな」
笑いながら瀬高は言う。後半部分は、おそらく啓太をおちょくったのであろうが、啓太は前半部分が気になった。
「こんな小さくても、できるんか? 野球ってのは」
「ん? ああ、まあな。もちろん、デカいに越したことはないけど、小さくても努力次第で上手くなる」
「そうか……」
少し興味が湧いてきた。啓太は、もう一度野球部の紹介欄を見る。
――まずは、見学してからやな
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