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総理は窓の方に椅子を回して、足を組み、片手に持った経済雑誌に目を落としている。
美里は近づくと、その本をパッと上に上げた。そこで、ようやくこちらに目を向けられた。
「ああ、北条くんか。どうやら君に気付かなかったようだが、他人の部屋に入る時には、ノックの一つでもするべきではないかね?」
「何度も私はノックをしましたが。」
そういうと総理は、心外のような表情をみせた。
「そうか、それはすまなかったな。少しばかり自分の世界に入ってしまっていたようだ。」
「別にそんなことはいいのです、総理。もう慣れましたから。そんなことよりも話が。」
美里のただならぬ様子を察してか、彼は椅子を彼女の方にまわした。
「なんだね?話とは。」
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