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襖の前で勝頼は大きな威圧感に襲われた。
勝頼(なんだこの威圧感は!父上に匹敵する、いや、それ以上の大きさだ。こんな威圧を発せられる人物とは一体…。まさか。)
勝頼は、ただ一人だけ思い当たる人物がいた。
襖をあけると三人の男がいた。その一人に気づいた時、勝頼は腰を抜かすほど驚いた。
勝頼「あ、あなた様は…。やはりそうでしたか。」
勝頼を驚愕させたこの男こそ川中島で信玄と互角の戦いをし、『越後の龍』と恐れられた上杉謙信その人である。
その一つ下には謙信の甥で今は養子となっている上杉景勝が。さらに下には上杉家中随一の猛将と謳われる柿崎景家が座していた。
勝頼の言葉からこの密会は開かれた。
勝頼「お待たせしました。しかし、はるばる越後よりいらっしゃるとはいかなる所存でございますか?」
景勝「!!
何も知らぬのですか?」
信房「御館様からの御命令でございますから。」
勝頼「??
信房、どういうことだ。」
謙信「ふふっ。いかにも宿敵らしいことをする。」
瞑目していた謙信が突然口を開いた。
謙信「勝頼と言ったな、宿敵の子は。
勝頼、これは宿敵が晩年、我に届けた文だ。読んでみよ。」
そういって謙信は勝頼に一通の紙を渡した。それを見た勝頼は驚きの事実を知った。
そこには、『信玄亡き後の武田家を支えてやってほしい』という内容の文面と、『信勝を軍神の兵法を学ばせるために人質に出す』という内容の文面だった。
つまり、武田は上杉に信勝という当主を人質に出し、同盟を結びたいということである。
勝頼「内容はわかりました。しかし、貴公は信長と対武田同盟を結んでいるはずでは?」
景勝「確かに我ら上杉家は織田と同盟を結んでおった。」
謙信「しかしそれは、織田の小僧が宿敵を恐れ、我と六度目の川中島の戦いをさせようと考えた同盟である。」
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