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甲斐、躑躅ヶ崎館。
武田勝頼は苦悩の日々を送っていた。
長篠の戦いにおいて彼は何人もの重臣を失った。現在残っている家臣といえば、一門の逍遙軒(信廉),穴山梅雪(信君),小山田信重,木曽義昌,仁科信盛。譜代では箕輪城を守備していた高坂昌信。外様では信玄の小姓を勤め、兄達の戦死によって家督を継いだ武藤喜兵衛こと真田昌幸などがいた。
軍議では今後の武田家の方針が議論されていた。今回の軍議になぜか木曽義昌の姿が見えない。
伝令「申し上げます!木曽義昌様、織田家へ寝返りました!」
勝頼をはじめ諸将のほとんどが動揺した。
そんな中でも高坂と真田だけけは平然としていた。
勝頼「諸将に改めて問う。今後我らはいかにいたすか?」
穴山「おそれながら、駿河へ進行しましょう。」
この発言に諸将の何人かが小さく頷いた。しかし、高坂はこの発言に異を唱えた。
高坂「いや、今はこの甲斐の防御を高めるべきかと思います。」
このような議論が何日も、そして今日も何時間も続いた。
その晩のことである。
近侍「勝頼様。高坂様、真田様がお見えになっています。」
こんな夜更けに何事かと思っていた勝頼だが、相手は信玄が『我が左目』と称す昌幸と、武田四名臣の一人昌信である。これは何かあるに違いない。それが吉報であることを願う勝頼だった。
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