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「?」
目を向けるだけで、何も言わない彼女に、アレクは首を傾げた。
なんとなく、幸せというか、満足感というか、自分が持つ何らかの願望が、叶った夢だった気がする。
「むう……」
忘れてしまった夢のことで、こんなに考え込んだのは、初めてだ。
自分自身、馬鹿らしいと思う……だが、思い出せば、何か得られるような気持ちに、押し流されてしまうのだ。
「エリスは……」
「ん?」
ぽつり、と零したような言葉に、思考を止め、顔を向ける。
「どうして、すぐに休もうとしなかったんだい?」
「……我の口から、言わねば分からぬか?」
呆れ口調で、目を細めながら言ってやる。
鈍いことは、重々承知しているが、ある程度のことは、汲み取って貰いたいものだ。
特に、今回のような事は……。
「……2人きりは、久々だな?」
「うん、そうだね」
「こうして話すのも、真正面に向き合うのも」
いつまで経っても察してくれないアレクに、痺れを切らしたエリスは、口を開いた。
だんだんと、恥ずかしくなるのは、気のせいという事にしながら。
「つまり、だ。 その……」
「うん……分かった」
だから、それ以上、何も言わなくいいという、その代返なのだろう。
「あぅ……」
優しく、それでいて強引に、ぎゅっと抱きしめられる。
肺から押し出され、吐き出た空気のせいで、おかしな声を出してしまった。
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