疲労困憊、魔王様

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              少し苦しいが、それ以上に温かい。 恍惚とした表情になりそうになるのを振り払い、腕の中からもがく。 「わ、分かったのならば、さっさと離れんか」 この反応が素直で無いことは、百も承知しているが、どうしようも無いのだ。 真ん中一直線に来る気持ちの塊は、上っ面だけの好意から背を向け続けた我には、少し荷が重い。 「嫌だ」 「この……、調子に乗りおって……」 「そんなつもりは無いけど……。 エリスが、本当に嫌がるなら、すぐにでも離れるよ」 「…………。」 事実なだけに、何も言えない。 誰か、この男の口を止めてくれないだろうか? こうなると、彼女に残された道は、開き直る他なくなる。 逆ギレという手も有るが、それも“今では”使えない。 「か、勝手にするがいい……」 「じゃあ、俺の気が済むまで」 ……さて、あれから10分前程経った訳だが、未だに離れる様子は無かった。 互いの体温が相乗し、肌がうっすら汗ばみだす。 「(流石に、汗の臭いを嗅がれる訳には……) アレク、これ以上は、その、色々とまずい……から、離してくれ」 今まで動きを見せなかった彼女が、乙女の心情的思考により、抵抗を試みる。 「はいはい」 あっさりと腕の力を抜くとは思ってなかったエリス。 気づいた時には、彼をはねのけるように離れてしまっていた。 体を包んでいた温もりの代わりに、肌寒い空気が襲ってくる。               
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