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あれから、色々なことがあった。
全て語るには、時間が足りないが、兎に角、魔界は平和で、俺の生活も、さほど変化していなかった。
最近の心配事は、エリスの体のこと。
魔界に仇なす存在がいなくなったことで、エリスの仕事は、激減した……訳もなく、
以前にも増して、国政に追われる日々だった。
手伝えることは、率先してやっていたが、政治に関わることに、俺が首を突っ込める筈もなく……。
指をくわえて、見守る他なかった。
そんなことを、思い返していると、
「ふっ、ふふ……」
クマをつけながら、ふらふらとするエリスが現れた。
薄笑いを浮かべながら近づいてくる様は、一瞬、逃げ出したくなる程だ。
「えーと……どうかしたの?」
「……お……」
「お?」
ぼそっと、小さく口にした言葉を反芻し、次の言葉を促すと、
「……終わったのだ」
一段落したということを、言いに来てくれたのだろうか?
とにかく、彼女を一旦休ませた方が良さそうだ。
「お疲れ様……と言いたいところだけど、一度、横になった方がいいよ」
ふらつくエリスに近づいて、優しく胸に抱き寄せた。
「こ、こらっ……いきなり何を……」
照れながら、腕の中から逃れようとするが、いつもより弱々しい。
更に心配になったアレクは、右手を太股に、左手を彼女の頭に添え、抱き上げた。
俗に言う、お姫様だっこ、というやつだ。
黒いドレスに身を包み、男に抱き上げられている、今の彼女を、誰が魔王と分かるのだろうか。
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