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「お、おい……アレク、いいから降ろせ」
「嫌だ」
顔を赤く染めながら放つ、エリスの言葉を否定する。
「なっ……!?」
予想外の返答に、彼女は言葉を失った。
その隙に、寝室に足を運びながら、彼女を見つめる。
「エリスが心配なんだ」
紅い瞳が揺れていることを、気にもかけず、さらに続ける……
「だから……」
「……。」
ことは、できなかった。
エリスに、人差し指で口元を押さえられ、それ以上、何も言えない。
「……お前の気持ちは……よくわかった」
胸元をぎゅっと掴まれ、心臓が大きく脈打つ。
我ながら情けないが、仕方ないのだ。
赤くなりながら、上目に彼女の潤む瞳で見つめられたのだから。
「わかったから、その……それ以上、言ってくれるな……聞いている、こちらが恥ずかしいぞ……」
「……。」
こくん、と上下に頭を振る。
言っている分には、恥ずかしいと思ったことは無いのだが、彼女は別のようだ。
それから、互いに目を合わせないようにして、会話も無いまま、彼女の寝室へと行く。
…
……
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